第99章 小切手

次の瞬間、彼女は有川紘樹を見上げた。退く気配など一切ない、冴えた声。醒めるほどに決然としている。

「お子さんを見るのは、もちろん構いません。でも条件があります。有川菜央の親権を、まず私に移してください。親権が私に来たなら、私はちゃんとそばにいて、責任を持って面倒を見ます。……それができないなら、有川家の敷居は二度と跨ぎません」

有川紘樹は、完全に言葉を失った。

まさか水野佑奈が、親権まで持ち出してくるとは思っていなかったのだ。

反射的に言い返そうとして、口を開く。だが、出てくるのは何ひとつない。

結局、黙ったまま立ち尽くすしかなかった。顔色は、見ているだけで背筋が冷えるほど暗い。

...

ログインして続きを読む